シンガポール
舞台裏：HSBC SVNSサーキットのゲームデー
グレート・ブリテン女子代表のアシスタントコーチであるWill Broderick氏と、男子代表の元キャプテンでオリンピック銀メダリストのTom Mitchell氏が、HSBC SVNSトーナメントの舞台裏をご案内します。
私たちが目にするのは、肉体のぶつかり合い、俊敏な動き、そして爆発的なスピードです。鋭い本能、巧みな駆け引き、そして魂を削るような闘志。歓喜の涙、そしてトロフィーを掲げる姿——まさに集大成といえるでしょう。
しかし、熱気に包まれるスタジアムの奥で、選手たちは何をしているのでしょうか？ 試合の合間、彼らはどこで、どのように過ごしているのでしょうか？
一日の流れを決めるのは、基本的に二つの要素です。一つはチームごとの特徴です。それぞれのチームには、独自のスタイルやこだわりがあります。そしてもう一つは、選手たちのコンディションです。
「調子が良いときは、すべてがスムーズに進み、日が終わるのが惜しいほどです」とBroderick氏は話します。
「しかし、現実に引き戻される日もあります。私たちはプロセスを重視していますが、結局のところ、この世界ではパフォーマンスがすべてです。感情の浮き沈みは激しく、週末の間に何度も天国と地獄を行き来することになります。」
試合当日のスケジュールは、ホテルから試合会場への移動、専用のロッカールーム、食事、リカバリーエリア、ウォームアップゾーン、そして試合へと続きます。
その間、選手たちは何を考え、どのように次の試合に向けて準備をしているのでしょうか？
Broderick氏がブラジル代表女子「Yaras」を指導していた際、試合の合間の時間がいかに重要かを実感したそうです。
この時間の使い方は、個人に合わせる必要がある一方で、チーム全体のためにも機能しなければなりません。
彼自身の役割も、選手の自主性を尊重しながら、適切なタイミングで意図的に介入するバランスが求められました。
「選手のニーズは、大きく分けて二つあります」とMitchell氏は語ります。「一つはフィジカル、もう一つはメンタルです。」
フィジカル面では、試合中のパフォーマンスを最大化するための細かな調整が行われます。
水分補給は不可欠であり、特に炎天下の試合では電解質が重要になります。乳酸を抑えるためにビートジュースを愛飲する選手もいれば、氷風呂で体を冷やす選手、長時間シャワーを浴びて疲労回復を図る選手もいます。
フィジオたちは、朝から晩まで選手のケアに追われます。テーピングを施し、マッサージを行い、怪我のチェックを繰り返します。
カフェインの適度な摂取も鍵となります。コーヒーが欠かせない選手もいますが、試合会場のクオリティに左右されるため、外から調達することも多いそうです。
「私は何度か飲みすぎて手が震えたことがあります」とMitchell氏は苦笑します。
エナジードリンクやカフェインガムも活用されますが、時には蜂蜜を直接ボトルから流し込むこともあります。「驚くほど効果がありましたよ。」
試合後の栄養補給も絶対に欠かせませんが、そのスタイルは選手によって異なります。
Perry Baker選手は基本的に軽食とプロテインシェイクで済ませますが、Harry Glover選手は「スパゲッティ・ボロネーゼをがっつり食べる」ことで有名です。
試合の振り返りも重要です。最初に行われるのは「ホット・デブリーフ」と呼ばれる即時のミーティングです。感情を落ち着かせるため、2分以内で簡潔にまとめられます。
技術的な分析は時間を置いて行われます。試合直後の頭は「オーバーヒート気味」なため、全体像を把握する程度にとどめるのが基本です。
同時に、メンタルのリカバリーも欠かせません。
Broderick氏は「プレッシャーを解放しつつ、集中を保つことのバランスが重要です」と話します。イングランド代表では「スイッチ・オン／スイッチ・オフ」の概念を取り入れていました。
つまり、試合の合間には意識的にラグビーから距離を置きます。ヘッドフォンで音楽を聴く選手、本を読む選手、トランプをする選手——中には数秒で寝落ちする選手もいます。「その能力は本当に羨ましかったです」とMitchell氏は語ります。
しかし、完全にスイッチを切るのは難しいものです。会場のスクリーンでは常に試合が流れ、トライが決まるたびにスタジアムが揺れるような歓声が上がります。それでも、「次の試合に向けて、自分の世界に没入すること」が必要なのです。
一方、コーチ陣に休息はほとんどありません。たまに一息つくことはあっても、基本的には試合の合間も分析に没頭し、新たな対策を練ります。
試合前に行われた事前分析に、新たに得た情報を加え、次の試合に向けたプランを練り直します。
一度リラックスした後は、試合に向けて再びギアを上げる時間です。
「選手たちが眠そうな顔をしていても、1時間後にはトンネルの中でエネルギー全開になっています。その変化を観察するのは面白いです」とMitchell氏は語ります。
試合が終わり、会場の照明が落ちます。しかし、すぐに眠れる選手はほとんどいません。
アドレナリン、カフェイン、そして試合の興奮——この組み合わせは最悪の不眠症カクテルです。
「セブンズでは、極限のプレッシャー下で素早く判断することが求められます。そのため、睡眠が足りないと本当に大変です」とMitchell氏は話します。
遅い時間のバスでホテルに戻る途中、彼はあることに気づきました。
「あと10時間後にはまたスタジアムに戻らなきゃならない。それで、みんなに言ったんです。『今すぐ寝ろ』って。」
コーチ陣の寝不足はさらに深刻です。
「スタッフはベッドでラップトップを開いたまま寝落ちすることもあります」とBroderick氏は苦笑します。
「試合が終わった後も、私たちは考え続けるのです。『もっとできることがあったんじゃないか？』って。」
煌びやかなライトや花火の裏側、長い廊下の先にある分析、回復、そして準備の場——そこでこそ、本当の勝負が決まるのです。